もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
 口の悪いアルドはラベーラのそういった言動を『俺も悪かったが、いい加減しつこいし相手をするのが面倒だ。いつまで同じ話をする気なんだ』と嫌い、よくグランツに愚痴を言っていた。

「心配しなくても、時機がくれば結婚の話も進むだろう。どちらにしろ、聖女の力の復活も待たねばならないし」

「……ええ、そうですわね。魔女に奪われた力が、果たして取り戻せるのかどうか不安ですけれど……」

 ラベーラが白魚のように美しい自身の手を見つめる。

 その目はアルドを捉える時と違い、冷たく無感情だった。



 婚約者との短い逢瀬を終えると、ラベーラは自室のソファに背中を預け、溜息を吐いた。

「忌々しい」

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