もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
 板で入り口を覆っただけの、家とも呼べない木のうろの前で顔を合わせるには、立派すぎる身なりの男だった。

 堂々とした長身の横には、額に白い星が入った見事な黒鹿毛(くろかげ)の馬。艶めく身体は黒銀のようで、馬でありながら近寄りがたい気品を感じさせる。

 彼女に求婚した男は、美しく逞しい馬の乗り手にふさわしい高潔な騎士に見えた。

 黒に近い短髪が、煤の森に差し込むわずかな光を受けて深い青色を弾いている。すっきりした印象を受けるが、襟足は長い。

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