もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
 疑いたくはないが、疑う理由が揃いすぎている。もしも彼女が本当にグランツを害そうとしているなら、許すわけにはいかない。

 ラベーラはかけらも焦りを見せずに、もの悲しそうに微笑んだ。

「私もアルド様の忠実な騎士様を祝福できたらと思いますわ。でも、魔女に襲われたせいで力が戻っていないのです」

 この世界のほとんどは魔力を持たない人間で構成されている。ラベーラもそのうちのひとりだ。

 だから彼女はシエルがいなければ、魔法を扱えない。王女の権力と、聖女として集めた偽りの名声を利用できはしても。

「ならば言葉だけでも構わない。君の聖女としての言葉は、俺の騎士の胸に深く刻まれるはずだ」

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