もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
 そうならなかったのはグランツがシエルになにも望まなかったからだ。

「今すぐ大広間に戻って公表してくれても構わないぞ?」

「私はセニルースの聖女だったのですから、セニルースで明かすのが筋でしょう。ですから、ここで証明するわけにはまいりません。……そこに本物の聖女がいるとしても」

 ラベーラは感情のない目でシエルを捉え、淡々と言う。

「ひと月……いえ、三月(みつき)いただけますでしょうか。年が変わってから、建国祭が開かれます。そこで真実を話すというのはいかがですか?」

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