もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
 グランツが眉間にしわを寄せて残念そうに言った。

「お忙しい時に必要以上の問題を抱える必要はありません。魔女の誤解を解くのに時間がかるのも仕方のないことですし、お気になさらないでください」

「すまない。俺が不甲斐ないばかりに」

 シエルは自分のために部下たちや公爵家の人間を日々説得するグランツを思って、首を左右に振った。

(本来なら、私が動くべきところをグランツ様が対応してくださっている。私にもできることがあればいいのに)

 グランツの名誉が回復しても、シエルはそうではない。ラベーラの嘘が明かされれば、それもまた変わってくるのだろうが、その日まではまだ時間がある。

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