もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
 本物の聖女の存在が明かされてからでも構わないと伝えているのに、グランツはなるべく早くシエルを自領に招待したいようだった。

 本格的に冬がくれば、煤の森の家での生活は一層厳しいものになる。以前よりずっと快適になったとはいえ、本来は人が住む場所ではないからだ。

「いっそ我が家にこっそり匿うという手もあるか。……いや、君を狭い部屋に閉じ込めたくはないな」

 グランツはシエルの過去を知っているからこそ、彼女のためだからという理由があっても無理を強いない。温かい部屋と食事を与えられても、彼女が大手を振って外を出歩けなければ意味がないと考えているようだった。

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