もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
 ふんふん鼻を鳴らしながらやってきた小さな魔獣は、シエルの膝ではなくグランツのもとへ向かう。

 またグランツが手を止め、寄ってきた魔獣の子供を抱き上げた。

「危ないから近づくんじゃない。ミディイルと遊ぶのはやめたのか?」

 きゅうん、と黒い毛玉が声をあげる。こうしていると、本当に子犬にしか見えない。

「今日は母親の姿がないようだが、また狩りに出ているのか。お前もそのうち、あのぐらいの大きさになるのだろうな」

 子魔獣はお腹を見せ、まだ短い尻尾を懸命に振って愛嬌を振りまいていた。

 かわいらしく微笑ましい光景に、いつもシエルは少しだけ心を和ませる。

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