もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
 それを聞いて、シエルは無意識に自分の身体を抱きしめた。

「だから私に求婚なさったのですね」

 シエルはずっと、求婚の理由をグランツに聞けずにいた。

 人と接する機会が少なかったせいで、どう切り出せばいいかわからなかったためだ。

 しかしグランツはシエルの納得した言葉に対し、首を左右に振った。

「貴女の見た目に惹かれたわけではない。……私の部下を助けてくれただろう? その時の貴女の姿に心を奪われた」

「え……」

「私が初めてここを訪れた日の話だ。赤髪の騎士を魔法で癒やさなかったか?」

 子魔獣の鳴き声も耳に入らないくらい、シエルは動揺していた。

< 44 / 477 >

この作品をシェア

pagetop