もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
 シエルが街の様子を水鏡に映した時には、黒い獣のおまもりが大流行していた。リンデンの危機を救った聖獣として、街のはずれに小さな神殿が建ったのも知っている。

 シエルは相変わらず水遊びが好きなミュンに魔法の水を浴びせながら、これまでを振り返って苦笑した。

「魔獣か聖獣かなんて、きっとあなたたちには関係ないのよね。私たち人間が勝手にそう呼んでいるだけで」

 ミュンがもふもふの尻尾を大きく振ったせいで、シエルに水がかかる。

 少し前なら風邪を引いていただろうが、最近は気温も高くなってむしろ気持ちがいい。

(聖女と魔女だって同じだもの。見る者の目で変わるものなんだわ)

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