もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
 改めて感謝を伝えられ、シエルは自分の気持ちの行き場に悩んでしまった。

 感謝の言葉とはこんなにも胸に響くものだっただろうかと、立ち尽くしたままグランツを見つめる。

(この方の言う『ありがとう』はラベーラ様のものと違って聞こえる……。どうして?)

 妙に心にしみる言葉は、シエルの胸に温かな火を灯した。

 むずむずするような得体の知れない気持ちが芽生え、この場から逃げ出したくてたまらなくなる。

「見せてはならないというのは、貴女が魔女と呼ばれている理由と関係があるのか?」

「わかりません。ただ、見せてはならないと言われていたので」

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