もふもふ魔獣と平穏に暮らしたいのでコワモテ公爵の求婚はお断りです
「……解せないな。魔女とは人を傷つけ、虐げる恐ろしい存在だろう。しかし貴女の魔法はとても優しかった。私には──貴女が聖女に見えた」

 ふる、とシエルが首を振って後ずさる。

(聖女はラベーラ様だもの。私はただの……影)

 このままだと余計なことを言ってしまいそうで、本当に逃げ出そうとしたシエルだったが、その前にグランツが彼女を止めた。

「この話をしてほしくないのなら、もうしない。だからもう少しだけ話に付き合ってくれないか?」

「どうして……?」

「貴女を好いているからだ」

 まっすぐな物言いは、彼に魔法を見られたことよりもよほど恐ろしい。

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