初恋の味は苦い
皿の上に一つだけ残ったエビにフォークを突き刺すと、ブリッとした力強い手応えだけが手に伝わった。
オフィスビル隣一階に入ったカフェ。
入店して15分で私はしらすとエビのペペロンチーノを平らげた。
さてどうしよう。
気が緩むと口元も緩む。
「覚えてる?俺のことー」
覚えてるよ、覚えてるに決まってますとも。
舌の上で分断されたエビたちが踊る。
でも、と私はフォークを皿の上に置いた。
10年の月日が流れてる。
そこに私はいなかった。
別の人生を生きてきたのだ。
きっと今の多田祥慈は、あの頃の多田祥慈ではない。
もしかしたら結婚して子供もいるかもしれない。
そう思った途端、一気に心が曇った。
女子大、会社と、私はあれからいろんな人に出逢ってきたはずだ。
それなのにこうして10年の期間を忘れるほど、彼の存在はなぜ強いんだろう。
「隣いい?」
ふと聞き慣れた声にハッとした。
私は驚いて見上げると、多田祥慈がそこに立っていた。
オフィスビル隣一階に入ったカフェ。
入店して15分で私はしらすとエビのペペロンチーノを平らげた。
さてどうしよう。
気が緩むと口元も緩む。
「覚えてる?俺のことー」
覚えてるよ、覚えてるに決まってますとも。
舌の上で分断されたエビたちが踊る。
でも、と私はフォークを皿の上に置いた。
10年の月日が流れてる。
そこに私はいなかった。
別の人生を生きてきたのだ。
きっと今の多田祥慈は、あの頃の多田祥慈ではない。
もしかしたら結婚して子供もいるかもしれない。
そう思った途端、一気に心が曇った。
女子大、会社と、私はあれからいろんな人に出逢ってきたはずだ。
それなのにこうして10年の期間を忘れるほど、彼の存在はなぜ強いんだろう。
「隣いい?」
ふと聞き慣れた声にハッとした。
私は驚いて見上げると、多田祥慈がそこに立っていた。