初恋の味は苦い
私はそんなことを言い放つ祥慈を見てられず、店頭の光を映し移ろう川の表面に視線を落とす。

キラキラした思い出はどこへ行ったのだろう。
祥慈からしてみれば、キラキラしてなかったのだろうか。
私にとっては宝物のようだったあの日々も、祥慈にすれば黒歴史。なかった過去。

本当に彼にとってみれば、何もなかったのだ。

「ここらへんでいいかな」

祥慈が一軒の店の前で立ち止まり、そして笑顔で私を見る。

「うん」

私がそう答えたのを確認すると、颯爽と店内へと入っていった。

つかめない。
彼の笑顔がすり抜けてく。

その笑顔の向こう側はがらんどう。

私はゆっくりと彼の後に続いて店に入る。
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