初恋の味は苦い
タイミングがソーセージをかじった時だったので、ソーセージの皮の硬さかと思いたかった。

しかし彼は続けて言った。

「相変わらず堅いままなんだね」

なんだかそれは私自身が否定されてるようで、祥慈と私を隔てるような響きだった。

「私は、自分がされて嫌なことはしたくないから」

私もソーセージを一本取り皿に取る。華奢な箸先で持ち上げられなさそうに重い。齧るとジュワッと肉汁が弾けた。

「ねえ、りっちゃん」

頭上でそう言われたので、私は顔を上げる。

「俺たち、もう普通に友達でよくない?」
「え?」
「俺たち、もう同じ社内だし、ちゃんと友達になろうよ」

口の中でジュワリと脂と旨味が混じり合ったはずなのに、私の脳はそれを認知しなかった。

「二人でいても、もう何かあるわけがないじゃん。だからもう、そんなに警戒しないでよ、あの頃の俺じゃないし」

祥慈はそう言って、箸を取り皿の端に置き、ジッと私を見つながらその空いた手を私の頭に静かに置いた。

懐かしい手の重みに、つい心を許しそうになる。

祥慈は笑顔なのにどこか悲しくて、再会なのに別れのようで。

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