初恋の味は苦い
「友達だと本当に思ってるなら、こういうことしないで」

私は右手で彼の左手を払った。

「ごめん」

彼は誤魔化すように笑って頭を掻いた後、続けた。

「なんでだろ、彼女には全然しないんだけど」

そう言ってジッと私の目を見てくる。頬杖をつきながら。

こういう時、正直私はどう返すのが正解なのかは分からない。慣れてないからだ。

レモンサワーをゴクリと一口飲んだ。アルコールが胃ではなく直接脳に回る。

「なんでだろな」

彼は微笑むと、目が横に伸びる。
驚いてる時はまんまるになるし、笑うとすっかり細くなる。そして絵に描いたように、弓のようにしなやかに曲がる。

目で表現する人だなあと、ぼんやりと思ってしまった。

「別に彼女のことは好きじゃないのかな」

祥慈は、運ばれてきたフライドポテトを面倒になって指でつまむ。

「なんか、ダメかもしれない。」

私もフライドポテトに直接手を伸ばす。嫌な油とパセリが指先について少し後悔する。

「ちょっと俺のこと警戒した方がいいかもしれないわ」

祥慈は笑った。

それはズルすぎる笑顔。

「何もないわけがないよな」

彼は照れ隠しするように琥珀の夢を飲み干し、またメニューを手にした。

あとは仕事の話に移って、恋愛の話なんてしなかった。
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