初恋の味は苦い
「なに、この手は」

私はパシンッと差し出された手を軽く叩く。

「うそだよ、なんとなくだよ、なんとなく」

彼はヘラヘラと笑いながら手をダラリと下ろす。

さっきから彼が無意識にすること、全部、私を揺さぶり落とす。

私も喜んで手を繋ぐタイプだったら良かったのかもしれないけど、そうしたら、今度こそ私はまた恋に落ちるかもしれなくて。

そうしたら、今度こそ、私が失恋する番だ。

「ねえ、りっちゃん」

半歩先を歩く彼が少し振り向きながら言う。

「もし俺に今彼女がいなかったら、今手繋いでた?」

私はどんな表情をしたのか、すぐに彼は吹き出した。

「悩むなよ」

そんな言葉が夏の終わりの空へと消えてく。

彼は10年確かに前に進んでいる。
だけど私は高2の冬のままだった。
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