初恋の味は苦い
お腹が鳴った。
なんだかんだ打ち合わせが長引いてしまってる。
お腹すいた。

15時半を指してる時計をぼんやりと見る。
たしか15時には終わる予定だったけど、ダイマツ精機の担当の八島さんと祥慈がかなり込み入った話をし始めて、当初そんな想定で組んだ出張ではなかったからかなりオーバーしてる。

無機質な白い会議室の中央で私はなんの役に立つこともなく、ただぼんやりとさっきから窓の外やらダイマツ精機のポスターやら時計を順番に見ながら時間を潰していた。

「森山さん」

祥慈の声でハッとした。

「これってもしこの部分新たに追加するってなったらって今すぐ見積り出たりします?」
「え、見積り?すみません、はい」

私はやっと二人の議題に入ろうとしたが、いかんせん専門外で咄嗟に出ない。
担当だったら分かったのかもしれないけど、普段ここまで突っ込んだ場に来たことがなかった。

資料が入ったタブレットで検索する姿勢は見せるものの今どの話をしていたのか分かったものではなかった。

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