初恋の味は苦い
濃厚接触者。
昨日の夜が思い出される。
頭の半分では、こうして全国にウイルスが広がってしまうのだな、という申し訳ない思いと、もう半分では断片的に残ってる記憶がごちゃごちゃに絡まり合う。
「ダイマツ精機の八島さんは、たぶんマスクしてたし濃厚接触には当たらないんだけど念のため俺から言うわ」
「大丈夫、そこらへんも私やっておくから寝なよ」
祥慈は電話の向こうでうなされるように「ごめんなさい」を繰り返し、私は「いいから寝なさい」を繰り返した。
電話は切れた。
ふと、私もこれから症状が出るんだろうかと言った漠然とした不安に襲われる。
鳥刺しに当たる前に、まさかこっちだったとは。
そうこうしてるうちに、なんとなく私自身も気のせいか怠い気がしてきた。
まさか、熱なんて滅多に出さないし。
何より出張帰りで二人揃って会社を休むなんてそんなことは、絶対にしたくない。
絶対に。
しかし運命の神様の悪戯か、祥慈の検査結果を聞くよりも早く私は38.5度の熱を出してしまうのである。
悪寒と喉の痛みに苦しんで、あっという間に週末の二日間は消えていった。
昨日の夜が思い出される。
頭の半分では、こうして全国にウイルスが広がってしまうのだな、という申し訳ない思いと、もう半分では断片的に残ってる記憶がごちゃごちゃに絡まり合う。
「ダイマツ精機の八島さんは、たぶんマスクしてたし濃厚接触には当たらないんだけど念のため俺から言うわ」
「大丈夫、そこらへんも私やっておくから寝なよ」
祥慈は電話の向こうでうなされるように「ごめんなさい」を繰り返し、私は「いいから寝なさい」を繰り返した。
電話は切れた。
ふと、私もこれから症状が出るんだろうかと言った漠然とした不安に襲われる。
鳥刺しに当たる前に、まさかこっちだったとは。
そうこうしてるうちに、なんとなく私自身も気のせいか怠い気がしてきた。
まさか、熱なんて滅多に出さないし。
何より出張帰りで二人揃って会社を休むなんてそんなことは、絶対にしたくない。
絶対に。
しかし運命の神様の悪戯か、祥慈の検査結果を聞くよりも早く私は38.5度の熱を出してしまうのである。
悪寒と喉の痛みに苦しんで、あっという間に週末の二日間は消えていった。