不倫ごっこしてみませんか?―なぜあなたも好きになってはいけないの?
第6話 親友の浮気遊び
3月24日(水)昼休みに親友の秋谷君から電話が入った。秋谷君は高校2年の同窓生で学部は違っていたが、同じ大学に進学した。学生時代も仲が良くて夏休みに一緒に旅行にも行った。彼の就職先は東京の電機会社だった。
働き始めてからも休日に一緒に旅行に行ったり、遊びに行ったりした。何事も経験とソープへも二人で一緒に行ったりもしていた。仕事に慣れてくると世話付きの秋谷君は合コンも主宰してメンバーにも誘ってくれた。
秋谷君も僕とほぼ同じころに合コンで知り合った岡田順子さんと結婚した。今では同じく一児のパパとなっている。結婚してからも時々二人で会って飲んでいる。お互いの結婚式に招待し合ったり自宅へ招待したりもしているので廸も秋谷夫妻を知っている。
久々に会って飲むことになった。場所はアクセスが良くてお互いの会社の中間にある駅近くのいつもの居酒屋で6時半に約束した。すぐに廸には[秋谷君と飲むことになったので夕食は不要]とメールを入れておいた。すぐに[飲み過ぎないでね]と返信が入った。
◆ ◆ ◆
「久しぶりだな、元気だったか?」
「ああ、この前はすまなかったな。せっかく誘ってもらったのに帰省の予定が入っていて」
「お袋さんの様子はどうだった?」
「元気そうで特に変わりはなかった。親父が亡くなってから、しばらくは落胆していたが、もう立ち直れたみたいだ。遺品の整理にも付き合ってきた。でも、なかなか捨てさせないので困っている。もう少し時間が必要かな」
「俺もしばらく実家に帰っていないが、兄貴が地元に残っているから任せている」
「次男は気楽でいいな。うちの弟も兄貴任せで困っている」
「そんなもんさ」
「町はどうだった?」
「実家の周りは徐々に寂れていくのが分かる。地方都市はみなそうみたいだけど、少子化で活気がないな。近所にも子供がいない」
「俺たちが出てきたせいもあるな」
「そうだが、就職口がなかったからしかたがないだろう」
「誰かに会ったか?」
「いや、2泊3日だけど、そんな時間は毎回ない。1日目と2日目はほとんど実家で家の掃除と片付け、庭の手入れなどを手伝って、3日目は早めに戻ることにしているから」
「しばらく同窓会をしてないな。確か前回は10年ほど前だったかな」
「秋谷君が幹事をしてくれたからできたんだ。皆どうしているかな?」
「地元に残っているやつと戻ったやつが半数くらいだったな。あとは関東と関西などに散らばっている。もうほとんどが既婚者だろうし、子供もいるだろう」
「また世話好きの秋谷幹事で同窓会をやってみるか?」
「そうだな、昔の彼女にも会ってみたいからな。前回はホテルでの夕食会にしたが、今回はゆっくり飲んで話せるから一泊したらどうだろう。地元の温泉旅館のオーナーに大学時代の友人がいるから一泊することにしても彼に頼めば場所の確保などに便宜を図ってくれると思う」
「帰る時間を気にしなくてよいから、その方がいいね。皆への連絡はどうする?」
「クラスの名簿はパソコンに保存してある。メールやら年賀状などの交換でできるだけ更新しているから大丈夫だと思う」
「5月の連休の後くらいに開催する方向で準備したらどうかな? 僕も手伝うけど」
「連絡は往復葉書とメールの両方でした方がよいと思う。住所もメルアドも変っている可能性があるから」
「連絡がつくメンバーだけでいいんじゃないか? どうせいつも来るやつしか来ないから」
「そうだな、日時と場所を決めたら手分けして連絡しよう。助かる」
十日前に田代直美に会ったとは言えなかった。同窓会を開催するなら2か月後が好都合なので提案した。直美に再会できる絶好の口実ができた。
「ところで奥さんは元気にしている?」
秋谷君の奥さんの順子さんは彼と同い年でしっかりしたキャリアウーマンだ。結婚式の司会をして事前打ち合わせもしたのでよく覚えている。二人は共働きで確か5歳の娘さんがいる。
「仕事と子育ての両立は大変だけど協力しながらやっている。ただ、保育所の送り迎えなどもあってお互いに相当疲れてはいる」
「あっちの方はどうなの? 僕はできるだけしているけど」
「まあ、求められたら応えることにしている。こちらから望んでも疲れていると気が乗らないみたいだから」
「今でも、あそこへは行っているのか?」
「たまにね」
「相変わらずだな」
「吉田君はどうなんだ?」
「結婚してからは行っていない。なんとなく後ろめたいから、行っても気が乗らないと思うし」
「昔から真面目は変らないな。俺はプロにはもう飽きてきたから、素人さんと時々」
「ええっ、素人さんと?」
「聞いたことあるだろう、援助交際とかパパ活とか」
「ああ」
「具体的に言うとそういう専門のサイトがあるんだ。そこで知り合う」
「そんなにうまくいくのか?」
「試行錯誤で要領が分かってきた。やる気があれば教えてやるけど」
「やめておく。素人さんとは。君子危うきに近寄らず。プロなら割り切れるけど」
「プロとは違って素人さんはいいぞ、新鮮味がある。入れ込んでしまわないようには注意しているけど」
「でも、そういう娘って、プロとは言わないまでもセミプロじゃないか?」
「そこのところはちょっと違うと思う。何人もの男性を経験している娘もいるだろう。まあ、そういう感じだ」
「なるほど、それなら分かる気がする」
「プロと素人の違いを分かっている?」
「プロは金銭だけの関係だろう。でも素人が相手でもパパ活のようにお小遣いのような金銭の授受は発生するだろう。だからセミプロといったんだ」
「どちらもお金はかかるけど、プロは確かに金銭だけの関係だ。相手が素人でも食事をしたりプレゼントしたりで、もっと費用はかかる。それにお小遣いは謝礼と同じだ」
「金銭だけの違いではないと?」
「プロは相手を選べないし選ばない。素人は相手を選べるし選んでいる」
「なるほど、もっともだ」
「どちらかというと、素人が相手の場合は、金銭の授受はあるとしても、両方に選択権がある対等な関係だ。選ぶ、選ばれるというのは恋愛に通じるところがある。そう思わないか?」
「確かに。それで同じ娘とは何回も会っているのか? 好きにならないか?」
「一回限りのこともあるけど、だいたい2~3回かな。それ以上になると飽きてくるからな。それに長い期間付き合うような深入りは避けた方がよいと思っている」
「まあ、その方が賢明かな」
「それに俺は何回か会わないと顔を覚えられないんだ。顔をしっかり覚えないうちに別れた方が良いと思っている。街中で出会っても覚えていないと気が付かないだろう」
「僕も人の顔は一回会ったくらいでは覚えられないからな、ありだね。でもやっぱり浮気性だな、秋谷君は」
「男って浮気性だろう。吉田君もそうじゃないのか?」
「そういうことを想像することはあるから、あえて否定はしないけど、それを実行に移してしまう秋谷君ほどじゃないと思っている」
「もう一つ、面白いことを教えてやろうか?」
「まだあるのか? 話したいみたいだから聞こうじゃないか」
「吉田君は口が堅いからな安心して話せるし、的確なコメントもしてくれるからな」
「ああ、秋谷君の話は決して口外しない。墓場まで持っていくつもりだ」
「既婚者合コンって知っている?」
「初めて聞いた。そんな合コンってあるんだ」
「このまえ誘われて1回出席した」
「へー、どうだった?」
「同年代の既婚者の男女がそれぞれ4~5名出席して、まず自己紹介をする。自己紹介は適当な内容でよい。それで飲食しながら自由な会話をする。だいたい2時間くらいで終了する。会話が弾めば、場所を変えて二人で話をしても良い。キャリアウーマン風の女性がほとんどだった。専業主婦はいなかったな」
「それだけ」
「今のところ、それだけだけど。気の合った人がいて名刺交換をした。次に会う約束をしたところだ。うまくいったらそのうち続きを聞かせてやろう」
「ああ、楽しみにしている」
気の合った友人と飲んで気兼ねなく世間話をするのは憂さ晴らしというかストレス発散にはもってこいだ。とりとめもない話に終始した。
ただ、僕に何でも話してくれる秋谷君には悪いが、田代直美とのことは話さなかった。確かに「素人さん相手の場合、お互いに選択権がある」はもっともな話だ。恋愛もそうだが片思いでは成り立たない。
働き始めてからも休日に一緒に旅行に行ったり、遊びに行ったりした。何事も経験とソープへも二人で一緒に行ったりもしていた。仕事に慣れてくると世話付きの秋谷君は合コンも主宰してメンバーにも誘ってくれた。
秋谷君も僕とほぼ同じころに合コンで知り合った岡田順子さんと結婚した。今では同じく一児のパパとなっている。結婚してからも時々二人で会って飲んでいる。お互いの結婚式に招待し合ったり自宅へ招待したりもしているので廸も秋谷夫妻を知っている。
久々に会って飲むことになった。場所はアクセスが良くてお互いの会社の中間にある駅近くのいつもの居酒屋で6時半に約束した。すぐに廸には[秋谷君と飲むことになったので夕食は不要]とメールを入れておいた。すぐに[飲み過ぎないでね]と返信が入った。
◆ ◆ ◆
「久しぶりだな、元気だったか?」
「ああ、この前はすまなかったな。せっかく誘ってもらったのに帰省の予定が入っていて」
「お袋さんの様子はどうだった?」
「元気そうで特に変わりはなかった。親父が亡くなってから、しばらくは落胆していたが、もう立ち直れたみたいだ。遺品の整理にも付き合ってきた。でも、なかなか捨てさせないので困っている。もう少し時間が必要かな」
「俺もしばらく実家に帰っていないが、兄貴が地元に残っているから任せている」
「次男は気楽でいいな。うちの弟も兄貴任せで困っている」
「そんなもんさ」
「町はどうだった?」
「実家の周りは徐々に寂れていくのが分かる。地方都市はみなそうみたいだけど、少子化で活気がないな。近所にも子供がいない」
「俺たちが出てきたせいもあるな」
「そうだが、就職口がなかったからしかたがないだろう」
「誰かに会ったか?」
「いや、2泊3日だけど、そんな時間は毎回ない。1日目と2日目はほとんど実家で家の掃除と片付け、庭の手入れなどを手伝って、3日目は早めに戻ることにしているから」
「しばらく同窓会をしてないな。確か前回は10年ほど前だったかな」
「秋谷君が幹事をしてくれたからできたんだ。皆どうしているかな?」
「地元に残っているやつと戻ったやつが半数くらいだったな。あとは関東と関西などに散らばっている。もうほとんどが既婚者だろうし、子供もいるだろう」
「また世話好きの秋谷幹事で同窓会をやってみるか?」
「そうだな、昔の彼女にも会ってみたいからな。前回はホテルでの夕食会にしたが、今回はゆっくり飲んで話せるから一泊したらどうだろう。地元の温泉旅館のオーナーに大学時代の友人がいるから一泊することにしても彼に頼めば場所の確保などに便宜を図ってくれると思う」
「帰る時間を気にしなくてよいから、その方がいいね。皆への連絡はどうする?」
「クラスの名簿はパソコンに保存してある。メールやら年賀状などの交換でできるだけ更新しているから大丈夫だと思う」
「5月の連休の後くらいに開催する方向で準備したらどうかな? 僕も手伝うけど」
「連絡は往復葉書とメールの両方でした方がよいと思う。住所もメルアドも変っている可能性があるから」
「連絡がつくメンバーだけでいいんじゃないか? どうせいつも来るやつしか来ないから」
「そうだな、日時と場所を決めたら手分けして連絡しよう。助かる」
十日前に田代直美に会ったとは言えなかった。同窓会を開催するなら2か月後が好都合なので提案した。直美に再会できる絶好の口実ができた。
「ところで奥さんは元気にしている?」
秋谷君の奥さんの順子さんは彼と同い年でしっかりしたキャリアウーマンだ。結婚式の司会をして事前打ち合わせもしたのでよく覚えている。二人は共働きで確か5歳の娘さんがいる。
「仕事と子育ての両立は大変だけど協力しながらやっている。ただ、保育所の送り迎えなどもあってお互いに相当疲れてはいる」
「あっちの方はどうなの? 僕はできるだけしているけど」
「まあ、求められたら応えることにしている。こちらから望んでも疲れていると気が乗らないみたいだから」
「今でも、あそこへは行っているのか?」
「たまにね」
「相変わらずだな」
「吉田君はどうなんだ?」
「結婚してからは行っていない。なんとなく後ろめたいから、行っても気が乗らないと思うし」
「昔から真面目は変らないな。俺はプロにはもう飽きてきたから、素人さんと時々」
「ええっ、素人さんと?」
「聞いたことあるだろう、援助交際とかパパ活とか」
「ああ」
「具体的に言うとそういう専門のサイトがあるんだ。そこで知り合う」
「そんなにうまくいくのか?」
「試行錯誤で要領が分かってきた。やる気があれば教えてやるけど」
「やめておく。素人さんとは。君子危うきに近寄らず。プロなら割り切れるけど」
「プロとは違って素人さんはいいぞ、新鮮味がある。入れ込んでしまわないようには注意しているけど」
「でも、そういう娘って、プロとは言わないまでもセミプロじゃないか?」
「そこのところはちょっと違うと思う。何人もの男性を経験している娘もいるだろう。まあ、そういう感じだ」
「なるほど、それなら分かる気がする」
「プロと素人の違いを分かっている?」
「プロは金銭だけの関係だろう。でも素人が相手でもパパ活のようにお小遣いのような金銭の授受は発生するだろう。だからセミプロといったんだ」
「どちらもお金はかかるけど、プロは確かに金銭だけの関係だ。相手が素人でも食事をしたりプレゼントしたりで、もっと費用はかかる。それにお小遣いは謝礼と同じだ」
「金銭だけの違いではないと?」
「プロは相手を選べないし選ばない。素人は相手を選べるし選んでいる」
「なるほど、もっともだ」
「どちらかというと、素人が相手の場合は、金銭の授受はあるとしても、両方に選択権がある対等な関係だ。選ぶ、選ばれるというのは恋愛に通じるところがある。そう思わないか?」
「確かに。それで同じ娘とは何回も会っているのか? 好きにならないか?」
「一回限りのこともあるけど、だいたい2~3回かな。それ以上になると飽きてくるからな。それに長い期間付き合うような深入りは避けた方がよいと思っている」
「まあ、その方が賢明かな」
「それに俺は何回か会わないと顔を覚えられないんだ。顔をしっかり覚えないうちに別れた方が良いと思っている。街中で出会っても覚えていないと気が付かないだろう」
「僕も人の顔は一回会ったくらいでは覚えられないからな、ありだね。でもやっぱり浮気性だな、秋谷君は」
「男って浮気性だろう。吉田君もそうじゃないのか?」
「そういうことを想像することはあるから、あえて否定はしないけど、それを実行に移してしまう秋谷君ほどじゃないと思っている」
「もう一つ、面白いことを教えてやろうか?」
「まだあるのか? 話したいみたいだから聞こうじゃないか」
「吉田君は口が堅いからな安心して話せるし、的確なコメントもしてくれるからな」
「ああ、秋谷君の話は決して口外しない。墓場まで持っていくつもりだ」
「既婚者合コンって知っている?」
「初めて聞いた。そんな合コンってあるんだ」
「このまえ誘われて1回出席した」
「へー、どうだった?」
「同年代の既婚者の男女がそれぞれ4~5名出席して、まず自己紹介をする。自己紹介は適当な内容でよい。それで飲食しながら自由な会話をする。だいたい2時間くらいで終了する。会話が弾めば、場所を変えて二人で話をしても良い。キャリアウーマン風の女性がほとんどだった。専業主婦はいなかったな」
「それだけ」
「今のところ、それだけだけど。気の合った人がいて名刺交換をした。次に会う約束をしたところだ。うまくいったらそのうち続きを聞かせてやろう」
「ああ、楽しみにしている」
気の合った友人と飲んで気兼ねなく世間話をするのは憂さ晴らしというかストレス発散にはもってこいだ。とりとめもない話に終始した。
ただ、僕に何でも話してくれる秋谷君には悪いが、田代直美とのことは話さなかった。確かに「素人さん相手の場合、お互いに選択権がある」はもっともな話だ。恋愛もそうだが片思いでは成り立たない。