真面目すぎた僕たちは。

過去1   伊藤蒼

付き合う前から、俺たち2人はお似合いカップルとしてからかわれることが多かった。梨生は気にしてない素振りを見せていたが、俺は内心嬉しかった。梨生本人に認められていなかったとしても、周りが認めているので心のどこかで、安心していたんだと思う。

修学旅行で告白したのは、ほぼ雰囲気任せだ。修学旅行マジックとやらで、成功すると思っていた。キッパリと意識してないと言われたけど。それでも引き下がれなくて、結局1ヶ月ほどお試しで付き合うことになった。複雑な気持ちだった。お試しでも付き合えたことは嬉しい。でも、梨生が無理しているのではないかという不安もあった。

「俺のこと好き?」

結構な頻度で確認していた。梨生は毎回わからない、と曖昧な答えを返した。まだダメなのかと、俺は段々焦っていた。


友達に相談すると「押してダメなら引いてみろ作戦」を提案された。他の女子と仲良くするのは意味がわからなかったが、梨生の答えが変わったとき、罪悪感に苛まれた。友達は「佐々木に自分の気持ちを気づかせるための、手段だったんだよ」と説明されたが、俺は申し訳ない気持ちになった。

梨生と本格的に付き合うことになったとき、友達は皆、おめでとうと喜んでくれた。俺はこれからの日常生活に期待をしていた。だが、梨生は愛情表現が苦手で、キスとかは全くできなかった。俺はよくしようとしていたけど、付き合う前よりは確実に距離ができていた。多分、ここから俺たちはすれ違っていたんだと思う。



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