真面目すぎた僕たちは。

過去2   佐々木梨生

蒼との思い出の中で、特に印象に残っていることがある。初デートのときの話だ。

「ねね、明日デートしない?」

遊園地のチケットを2枚、ひらひらとさせながら蒼が聞いてきた。初めて蒼との会話に出た、デートという単語に驚きつつも了承した。蒼は見たこともないくらいの満面の笑みを見せた。


その日は自由に遊ぼうと言われていたので、私は大好きなジェットコースターやお化け屋敷を乗り回した。蒼も何回か付き合ってくれて、完全に私が蒼を振り回していた。
ご飯も、私が1人でたくさん食べて、蒼に奢ってもらった。何度も断ったのだが、「俺が奢る!」と聞かなかった。
帰り際、蒼は私が大好きな漫画のキーホルダーをくれた。私が高額な物が苦手ということは知っていたみたい。「ありがとう!」と興奮する私を見て、とても喜んでくれていた。


今考えてみれば、蒼は遊園地とか絶叫系があるところには、あまり行きたがる人ではなかった。私の自分勝手に蒼は嫌な顔1つせず、付き合ってくれた。気遣えなかった私は本当にバカだと思う。
ご飯だって、私に奢るためにバイトを増やし、貯金していたのだそう。蒼の家は貧乏で、奨学金を借りていた。そのための貯金を減らしていたのだ。
あのキーホルダーも限定もので、朝から時間をかけて並んでようやく買える物だった。



私は、蒼の尽くし気味なところに甘えすぎていた。
恋愛は、どちらか一方が愛を注いでいても、それを維持することはできない。

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