結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
第一章 夏の恋

出会いは突然に



——六年前の夏。海辺の街で二人は出会った。


 ソフィア・グレーンは珊瑚色の髪を海風になびかせながら、海岸をひとりで歩いていた。

 王都の蒸し暑い夏を逃れ、涼しい海辺で過ごす避暑地としてセイリュースは有名だ。王家は離宮を建て、それに呼応するかのように有力な貴族たちはこぞって別荘を建てた。青い海に映えるように、白い漆喰塗りの別荘が好まれている。

 坂に並ぶように四角い家に青い屋根の家が建っている様は、紺碧の海と揃うと一つの絵画のように美しい。

 ソフィアの父、グレーン男爵も白い別荘を持つ一人だった。母が生きていた頃は夏になると毎年家族で避暑に来ていたが、今は父も仕事に追われセイリュースに来ることはない。

 十八歳になってようやく、一人で別荘に来ることの許しが出た。久しぶりに吸い込む海辺の空気は、潮気がありながらもカラッとしている。王都にいると淑女としてふるまうことを求められるが、この海辺の街に来るとちょっぴりだけど気を抜いて過ごすことができる。

< 1 / 231 >

この作品をシェア

pagetop