結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ～裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ～

（アルベルトが、大切な人を忘れている？　——それは私のことをいっているのだろうか？　いや、まさか）

　ソフィアは混乱しながらアルベルトを見つめた。彼の言う、大切な人とは誰のことを言うのだろうか。もしかして、ローズのことを忘れてしまったのだろうか。いや、でも身近にいる妻のことを忘れた場合、一人でセイリュースに来るとは思えない。はやり、自分のことだろうか。

アルベルトは苦渋の思いで顔をしかめながら吐き出すように言った。

「そのことで私は、その大切な人を不幸にしているのではないかと思えてならないんだ」

　何を今さら——、思わず言葉にしてしまいそうになり、グッと口を閉じる。

「だけど、もう六年もたっているから、その大切な人もその人の人生があるのでは？」
「そうかもしれない、もしそうだとしたら、それだけでも確かめたいんだ。——頼む、この通りだ」

　アルベルトは頭を下げてソフィアに頼んだ。大貴族の彼が、今は平民のソフィアに土下座をしかねない勢いだった。

　彼の権力を使えば、ナード畑をたてにして一言脅せば済むことだった。しかし、今日はそのことを言わずにいるため、ソフィアの中に迷いが生じて来た。