結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 もし、もしもアルベルトが全てを思い出したとしたら——、その上でリヒトを自分のところに残してくれれば。出来れば養育費を出してもらい、もう少しリヒトに栄養のある食べ物を与えることができるだろうか。

 そんな都合のいいことが叶うかわからないが、ソフィアが何もしなくても、思い出してしまう可能性もある。だとしたら、先に約束を取り付けておいて、彼の記憶が戻るのを協力した方がいいのかもしれない。

「そうですね。では——、思い出した暁には、その大切な方の大事なものを取り上げたりしないと約束できますか?」
「大事なもの? ものによると思うが」
「約束していただかなければ、お手伝いすることは出来ません」

 それはソフィアの賭けだった。記憶を取り戻す手伝いをすればナード畑を守ることができる。だが、記憶を取り戻したアルベルトに、ソフィアにとって一番大切なリヒトを奪われるかもしれない。だが、それだけは避けたかった。

「わかった、そのことは約束しよう」
「わかりました、では——」

 肖像画のことを話そうとした途端、ソフィアのお腹がぐぅっと鳴ってしまう。思わず手を口にあてるが、きっと聞かれてしまっただろう。

 真面目な話をしていたのに、恥ずかしい音を立ててしまいソフィアはいたたまれなくなってしまう。

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