結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 細い声を拾うと、どうもソフィアとローズと混濁しているようだ。不思議に思いアルベルトを見ても、彼は苦し気に顔をしかめている。

「それは、どういうことですか? 私の髪の色は昔も今も、この珊瑚色をしていますが」
「あぁ、すまない。今のは気にしないで欲しい。他には何かあったのかな」

 アルベルトはもう、これ以上そのことに触れないで欲しいようだった。

懐かしいものを思い浮かべるように、遠い目をして海を眺めている。ソフィアも水平線を見ると、まるで空と海が溶け合うように見事なグラデーションを描いていた。海カモメが風に乗って空を飛んでいる。

「ここの海は、美しいな」
「えぇ、こんなにも美しいのに、アルベルトは『世界の真実』だといって、ぐるぐるした渦巻のような模様を描いていて。それがおかしかったの」

 ソフィアはアルベルトと初めて出会った時を思い出した。あの日もこうして、海は穏やかに輝いていた。もう少し、思い出を話してもいいかもしれない——、ソフィアは帽子を手に持った。

「私は一度、大切な帽子を飛ばしてしまったんです。それを、あなたが海に入って取って来てくれました」

 白い帽子を見せると、アルベルトは食い入るようにしてそれを見た。すると記憶の欠片が戻って来たようで、楽しそうに声を上ずらせて話し始めた。

「そうだ、僕はその時ずぶぬれになってしまい、君の家に行った。そうだろう?」

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