結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 それにはアルベルトに、今のナード畑を購入する計画を止めさせなければいけない。

ソフィアは明日からも頑張らなければ、と思う一方で今日のようにアルベルトに近づきすぎるのも怖い。まるで、自分が自分でなくなるような感覚に捕らわれる。今更、既婚者の彼にこころをかき回されたくはない。本気になって傷つくのは一度でもう十分だ。

明日の朝一番に節度ある距離をお願いしなくては、と思いながらソフィアは手の中渡された封筒を見た。

 今日、彼からお礼として渡された金額はソフィアの酒場での給料の一か月分に匹敵した。アルベルトにしてみると僅かな金額だろうが、ソフィアには大金だ。

 十分すぎるお礼のおかげで、ソフィアはリヒトの靴と服を購入していた。これでリヒトもしばらくは困らないだろう。

 家に帰ると、リヒトは新しい靴に興奮して家の中ではき始めた。ダメだよ、と言っても嬉しそうに靴を撫でている。誰もはいたことのない真新しい靴をはくのは、リヒトにとって初めての経験だ。

 こんなに喜ぶとは思ってもいなかった。これで新しい服を見せたら、さらに興奮してしまうだろう。買った服を見せるのは今度にしておこうと、ソフィアは棚にしまうとお土産で渡された紙袋を開く。

 中には冷めてしまったけれど、紙箱にパンケーキが入っている。

「リヒト、手を洗ってきたら、おやつを食べましょうね」
< 115 / 231 >

この作品をシェア

pagetop