結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 ソフィアはスカートの裾についた砂をはらい落とすと、真っ青な空を見上げた。今日は空が澄んでいるから、夕焼けが綺麗だろう。久しぶりにリヒトと夕日が海に落ちるのを見にこようと、ソフィアは水平線を見つめ歩き始めた。





「ママ! 見て! 蟹さんがいる!」
「待って、リヒト」

 夕方になって海岸に着くと、リヒトは嬉しそうに駆けだした。海岸でも岩礁のあるところには、小さな海の生き物を見つけやすい。

 砂浜に足をとられると走るのも一苦労だけれど、リヒトはそんなことには構わずに走り出してしまう。子どもは本当に元気がいいから、一緒に遊ぶのも体力がいる。

 以前は動くことと言えば散歩するくらいだった令嬢時代と違い、ずいぶんと体力がついた。子どもを産むのも、暮らしていくのも力がいる。病気になる暇もないくらい、慌ただしく毎日を過ごしてきた。

 それでも、リヒトの笑顔を見ると元気が出て——、また頑張ろうと思えるから不思議だ。

「リヒト、あんまり遠くに行っちゃダメだよ!」
「うん! わかったからママも早く来て!」

 今日は特別に空が赤い。本当に、空が澄んでいる日の夕焼けはまるで燃えるように美しい。水平線にだんだんと太陽が沈もうとしている様は、いつ見ても感動する。

(アルベルトと一緒に夕焼けを見たのよね)

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