結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 満月の夜までに迎えに行くと約束をしていたから、グレーン男爵に連絡だけでもしようと思うが、父は跡取り息子の急死に心を病んだように落ち込んでしまい、アルベルトが代理で葬儀を取り仕切ることになる。目が回るほど忙しくなった。

 そこに、兄の婚約者だというローズが忍び寄ってきた。

 兄が死んだことで嘆き悲しんでいたかと思えば、アルベルトの前では大胆な服を着て近寄ってくる。嫌な女だ、と思っていたが、兄の子を妊娠しているとあれば無碍にはできない。

 兄の葬儀がようやく終わり、ホッとした時に彼女から渡されたホットワインを飲んだ後に睡魔に襲われた。ワインもおかしな味をしていたが、隣国から持ってきた貴重なワインだと言われてしまえば、そうかとしか思えなかった。

気がつくと、時計のような音がポーン、ポーンと規則的に鳴っている。女の声が耳元でささやかれた。

『あなたの愛している女は、ローズよ』
『僕の……、愛している人はローズ』

——それからだ。ソフィアの記憶がするりと抜け落ち、ローズがその場に座るようになった。

 ソフィア、愛しい彼女の名前を忘れただけでなく、自分が愛しているのはローズだと思い込んでしまった。

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