結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 そこからはことばを失くして、見つめられるだけだった。鉛筆を持ち始めたアルベルトは、素早くスケッチを始めていく。ソフィアは碧い瞳に全てを見られるようで恥ずかしくなり、彼の瞳を見つめ返すことはできなかった。





 毎日の散歩の途中で、アルベルトの隣に座るようになって数日がたった。たわいのないお喋りをする中で、お互いの境遇をぽつり、ぽつりと話していく。といっても、ソフィアがおしゃべりするのをアルベルトがスケッチをしながら聞いていることの方が多かった。

「この街にはね、小さい頃は両親とお兄様と、家族で来ていたの」
「そうなんだ」
「お母様は私を産んでから、体調を崩されることが多くなったって、ミリーが言っていたわ。ミリーっていうのは、私のお世話係っていうか、今では母親代わりのような人なんだけどね」
「うん」

 カリカリ、カリカリと鉛筆が紙の上を走る音がする。話すことがなくて沈黙していても、お互いの存在が心地いい。アルベルトが鉛筆を削る音が、波の音と重なる瞬間があった。

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