結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ～裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ～

　ソフィアはスープといったら、野菜を刻んで浮かべるくらいしかできない。二枚貝を使ったスープなんて、作ったことはなかった。

「貝をつかったスープなの」
「へぇー、どんな味なのかな」

　目を輝かせるようにしてスープ皿に盛り付けられたクラムチャウダーを見たリヒトは、大人一人分をペロリと食べてしまった。そしてまだ届く予定の料理を楽しみに、ウキウキしてスプーンを立ててしまう。

「もう、リヒト、スープを飲み終わったらこうして横に置くのよ」
「ソフィア、マナーを教えるのは今度からでいいよ。今夜は初めて親子で食事ができるから、ゆっくりしよう」
「アルベルト、親子って」
「僕と、君と、リヒト君だ。君も認めていたはずだよ、リヒト君の父親は僕だって」
「それは、そうだけど」
「じゃあ、問題はないようだね」

　気がつけば次々と料理が運ばれてくる。魚介スープで煮込んだパエリアに、肉厚ベーコン焼きは小さく切ってある。アルベルトは冷えた白ワインをグラスに注ぐと、ソフィアに渡した。

「ワインは飲めるようになった？」
「え、ええ。もちろんよ。もう、あれから六年もたっているのよ」

　ソフィアは受け取りながら、初めて二人で昼食を取った時のことを思い出す。あの頃はまだミレーに子ども扱いされていて、ワインも何もアルコールを飲んだことがなかった。そんな小さなことまで、アルベルトは思い出している。