結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ～裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ～

　リヒトはさっきからソフィアにぴったりとくっついている。昨日からアルベルトが近くにいるが、リヒトにしてみれば大人の男性に慣れていない。それも、アルベルトは平民と違いパリッとした服を着て常にシダーウッドの上品な香りをまとっている。

「リヒト、怖がらなくてもいいのよ。アルベルトさんは、あなたの……」

　パパなのよ、と紹介しようとしたところでソフィアは思わず言いよどんでしまう。彼を父親だと説明してもいいのだろうか。よく考えてみたら昨日はリヒトにアルベルトの名前しか伝えていない。

アルベルトの方を見ると、いかにも大丈夫だと伝えるようにうん、と一つ頷いた後、ふわりと笑ってリヒトに話かけた。

「僕がパパだよ、リヒト君。ほら、髪の色も瞳の色も一緒だろ？」
「パパ？　パパなの？　僕にもパパがいたの？」
「あぁ、迎えに来るのが遅くなって悪かった。でも、もう大丈夫だ」

　アルベルトはしゃがみ込んで手を広げると、リヒトはソフィアから離れていく。アルベルトに近づくと、じっと顔を覗き込んだ。

「レーナのパパは髭がはえているのに、僕のパパには髭がない」
「ははっ、髭があった方がいいか？」
「ううんっ、ない方がいいよ。僕のパパの方が、何倍もかっこいい！」

　アルベルトはリヒトの脇に手を入れると、持ち上げながら立ち上がった。

「ほら、リヒトのパパは背も高いんだぞ」
「うわぁ、ほんとだ！」