結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
「えっ、アル! ちょっと気をつけて!」
「大丈夫だよ、子ども一人くらいどうってことないさ」
 
 アルベルトはリヒトを抱き上げると、お尻を持って安定させて窓の方に近寄り海の方を指さした。

「ほら、リヒト。ここからは海が見えるだろう? セイリュースの海は美しいな」
「うん、僕は海の向こうに行くんだ!」
「なに? リヒトは新大陸に興味があるのか?」
「アル、新大陸なんてそんなこと知らないのよ。ただお隣のレティさんのところの、レーナちゃんのお父さんは船乗りだから身近なのよ。セイリュースの男の子はみんな船乗りに憧れるのよ」

 ソフィアはアルベルトの隣に立ってそっと見上げた。リヒトを抱き上げた腕は力強く、ソフィアが見せることのできない景色を見せていた。リヒトは瞳をキラキラさせて、好奇心いっぱいの表情をしている。

「そうか。でもいつかパパとママと一緒に行こうか。海の向こう側に」
「本当? パパは船に乗れるの? 船乗りになるのは難しいって、レーナが言っていたよ!」
「はははっ、パパなら船会社を買うから、船に乗るのは船乗りじゃなくてもいいんだ」
「アルっ! そんな簡単なことみたいに言ったら信じちゃうわ。リヒトはまだ五歳なのよ」

 ソフィアは慌てて否定すると、アルベルトは真面目な顔をして反論する。

「大丈夫だ、ソフィア。ヘザーズは物流にも力を入れているから、船会社を買う話は前からある」
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