結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ～裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ～

　夫ではないと言いたいけれど、それはそれで厄介になる。アルベルトもどうやらそのまま何も話さないので、ソフィアは訂正することなくその場を去ることにした。

リヒトはひとしきりレーナに自慢をし終わると、またアルベルトに抱っこをせがんでいる。余程アルベルトの抱っこが気に入ったのだろう。

「リヒト、もうママびっくりしちゃうから、飛び出すのは止めてね」
「でも、いっつもレーナは僕に自慢してばっかりだったんだ！　レーナのパパは船乗りでかっこいいんだって！　だから今日は僕がレーナに自慢したんだ！　だって、僕のパパはこんなにもかっこいいんだもん！」
「リヒト……」

　きっと、リヒトも幼心に自分の父親がいないことを悲しく思っていたのだろう。アルベルトが父親だと伝えた時から、リヒトは嬉しそうにしている。レーナもアルベルトを見てポカンとしていたくらいだから、きっとリヒトも満足したことだろう。

　レティのあの様子では、きっとすぐに噂が回るだろう。

（でも、それでもいいか。アルベルトはリヒトの本当のお父さんだしね）

　ソフィアはこころが浮き立つのを感じると、笑顔でアルベルトを振り返った。ソフィアの眩しいほどの笑顔に、アルベルトは愛しいとばかりに目を細めて彼女を眺めた。





　二人は馬車を呼ぶと、さっそくレッドロックス商会の扉を叩いた。するとすぐに店番をしていたジミーが扉を開けた。