結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
「ソフィアの作品? あぁ、あのクロッシュレースの小物か」

 ジミーはソフィアに向き合うと、言われた品物を思い出したように頷いた。そしてソフィアに顔を近づけると、低い声でボソッと伝える。

「なんか、社長さん以前と全然雰囲気が違うな」
「ま、まぁね」

 いろいろあったことを伝えたいけれど、すぐ傍にアルベルトがいるからソフィアはそれ以上言葉を伝えるのを遠慮した。ジミーはチロリとアルベルトを見た後、二人を客室へと案内する。

 部屋に入ると、以前と同じ場所にアルベルトは座った。前回と違い隣にはソフィアがいて彼の膝の上にはリヒトが座っている。

 リヒトは場所見知りをしたのかキョトンとした目をして大人しく座っている。それでも、アルベルトの足の上を跨り、腕をつかみながら座る様は親子にしか見えない。

「すぐに品物を持ってきますので、待っていてもらえますか?」
「あぁ、ソフィアがこちらに卸した倍の額を払うから、言ってくれ」
「は、はぁ」

 突然やってきたヘザーズの社長であるアルベルトに気圧されながら、ジミーは奥の方へ消えていく。アルベルトは出された紅茶をゆっくりと飲んだ。

「なんだか、ここで会ったのが三日前なんて信じられないわ」
「僕も、まさかあの時は自分がこんなにもすぐに記憶を取り戻せるとは思っていなかったよ」
「本当にね」
< 185 / 231 >

この作品をシェア

pagetop