結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
すぐに受けとりたいけれど、結婚を意味する指輪を受け取ることに、まだ戸惑う気持ちも大きい。けれどアルベルトは指輪をソフィアの手に乗せた。
「そもそも、この指輪は六年前から君の物だ。君だって質に流れた後でも、いつか買い戻したかったと言ってたじゃないか」
「それは、そうなんだけど」
「僕は、君と結婚したいと思っている。いや、君にしかもうこの指輪を贈ることはできない。……だけど、返事は焦らないでいい。今の僕の人となりをみて、決めてくれたらいいよ。僕にとっては嬉しくない返事だとしても、君とリヒトが十分豊かに暮らせるだけの支援はするつもりだから、そこは気にしないで欲しい」
「アル」
すぐにはことばが出ないけれど、ソフィアのこころは揺れ始めていた。今日一日だけでも、アルベルトの深い愛情と揺るがない信念を感じることができた。リヒトもなついているし、アルベルトも幸せそうに相手をしてくれる。
けれど、結婚となると生涯の問題でもある。そもそもアルベルトはヘザー侯爵位を継ぐ者だから、その妻となると侯爵夫人だ。平民となったソフィアの身分の問題も残る。それら全ての障害を乗り越えるだけの愛をまだ、ソフィアは信じることができずにいた。
アルベルトはそのこともわかっているようで、それ以上結婚を迫るようなことは言ってこなかった。