結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
「こんばんは。僕はリヒトの父親でアルベルトと言います。これからは僕が二人の面倒を見るので、急に言って申し訳ないのですが、ソフィアはこちらを止めさせていただきます」
「アルっ!」

 ソフィアの肩を抱いたまま、アルベルトが伝えるとホールに出ていた同僚たちが「わぁ!」と顔を向けて叫んだ。その場にいた常連のお客たちも、ソフィアが真っ赤になる様を見ると陽気になって杯を上げた。

「おいっ、マスター! 嬉しいことじゃねぇか! ソフィアちゃんの旦那が戻って来たんだ、こりゃ乾杯だな!」
「おっ、おう! そうだな」
「それに、こんな美丈夫を捕まえたんだ、二重に祝いだ! そうだろう?」
「「おおっ」」

 酒場は一気にお祝いする雰囲気となり、店主も調子に乗ると「よしっ、乾杯だ!」と言って酒を配り始めた。アルベルトが「今夜は全て僕が奢ります」と言った後は、さらに盛り上がる。

 まさか、アルベルトを連れて来たらこんなことになるとは思いもしなかった。酒の売り上げが一気に増え、店主も喜んでいる。最後にこれまでの給料を手渡されたソフィアは、思わず「お世話になりました」と頭を下げながらも声を震わせた。

「いい男じゃねぇか、もう離すんじゃねぇよ」
「は、はい」
「ソフィアちゃんは、もう少し料理を練習して胃袋も掴むんだよ」
「料理長、それは自信ないけどがんばります」

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