結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 店主と料理長にそれぞれ挨拶をすると、ソフィアたちは邪魔にならないうちに酒場を出た。すっかり深夜に近い時間になっている。海風が吹き込んでくると、ソフィアは思わずぶるっと肩を震わせた。

「ソフィア、寒くないか?」
「大丈夫よ、まだ夏だもの。でもやっぱり夜は冷えるわね」
「僕が、温めようか?」

 アルベルトは酒場で祝いの言葉をかけられた時に、何杯かエールを飲んでいた。そのため少し酔っているのか、いつもより顔を赤くしている。

「なっ、なにを言うのよ」
「本気だよ」
「アル、でも私」

 まだそこまでの気持ちになることはできない。流されたまま、感情の赴くままに身体を許すことがソフィアには恐ろしかった。

「わかってる。ソフィアが僕を受け入れられるようになるまで、待つよ」
「……っ、ありがとう」

 アルベルトは羽織っていたジャケットを脱ぐと、ソフィアの肩にかけ手を握る。恋人繋ぎ、と最近知った指を絡めるつなぎ方をすると、アルベルトはまるで悪戯を楽しむ子どものように微笑んだ。

「ソフィア、こんな夜中に二人で出歩くのも初めてだ。夜の海を見に行こう」
「え、う、うん」

 嬉しそうにクツクツと笑うアルベルトを見ると、ソフィアも嬉しくなっていく。まるで六年前の二人に戻ったように、海岸まで行く道すがら二人は互いのことを語りあった。

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