結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 夜の海岸線には波が打ち寄せる音しかない。今夜は月が綺麗に光っているおかげで白波が綺麗に見えるが、その奥は吸い込まれるような闇になっている。

「わぁ、夜の海って怖いのね」
「あぁ」

 ザザーン、と波の音を聞きながら頬に生暖かい潮風を受ける。帰ったら身体を拭かないと、塩がついてべたつくだろう。ふと横にいるアルベルトを見ると、彼は瞳を光らせてソフィアを見つめていた。

「ソフィア、君を思い出すことができてよかった」
「アルベルト」
「僕の本当の気持ちだ。何度でも言うけど、君をこころから愛している」

 昼間も同じことを伝えられた。だが、ソフィアにはどうしても疑問が残っていた。

「アルベルト、どうして私なの? だって、あなたが恋した私は、六年前の私なのよ。リヒトのことに責任を感じているなら、少しだけ援助をしてくれたら助かるけど、無理に私と一緒にいることはないのよ」

 アルベルトに守られ、愛される人生。かつてのように素直にその手を取りたいけれど、今はもうあの頃の自分ではない。苦労を重ねた肌はかさついているし、爪の手入れも何もしていない。髪も切ってしまっている。

 女としてではなく母として生きて来たから、かつてのように自分に女性としての魅力があるのか、自信がない。これまではリヒトと二人、穏やかにセイリュースで暮らしていくことしか考えていなかった。

< 195 / 231 >

この作品をシェア

pagetop