結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
「ミレー、ミレー、また一緒に暮らせるの?」

 顔をくしゃくしゃにしたままソフィーが問いかけると、ミレーは力強く頷いた。

「はい、もう引退しようと思っていたところで、こちらのヘザーズの社長様からお話をいただきました。驚きましたよ、あの絵描きの青年が本当は社長様だったなんて」
「そうね、そうよね……」

 何から説明していいのかわからないのに、涙が止まらない。するとアルベルトが、リヒトを抱っこして二人のところにやってくる。リヒトはアルベルトの腕からするりと降りるとソフィアの方へと駆け寄ってきた。

「ママ! 泣いちゃったの?」
「リヒト、ママは嬉しくて泣いちゃっただけだよ」

 アルベルトから交代してリヒトを抱っこすると、その様子を見ていたミレーが微笑んだ。

「そちらがリヒトお坊ちゃまですか? こんなに大きくなるまで、苦労されましたね。本当に、何度も探したのですが王都にはいらっしゃらなかったようで……」
「ずっとセイリュースにいたの」
「ソフィアお嬢さま、本当にあの時はお力になれず申し訳ありませんでした」

 ミレーが頭を下げると、ソフィアは慌てて「そんなことしないで」と彼女を止めた。ソフィアはリヒトと暮らしていく中で、誰のことも恨まないようにしていた。それよりは前を向いて生きていきたいと、気持ちを切り替えていた。

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