結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
「そうだったね、これも君からのプレゼントだった」

 すでに六年もたっているのに、洗い立てのように綺麗に折りたたまれている。

「アル、このハンカチはしばらく預かってもいい?」
「いいけど、どうして?」
「あなたの家名を入れたかったの。あの時は、ヘザー侯爵家だと知らなかったから」
「あぁ、そうだったね」

 ソフィアはハンカチを胸にあてて握りしめた。思えば、幸せの全てをアルベルトが用意してくれる。震える胸を抑えながら、ソフィアは肖像画を見上げた。隣に立ちソフィアを見つめるアルベルトの目はいつまでも優しく、穏やかなものだった。





 しばらくするとアルベルトは抜けられない仕事があるから、と言って別荘を出て行った。家を整える仕事を任されたソフィアは、ミレーと一緒に別荘の掃除からとりかかる。リヒトも一緒に手伝わせながら、二人は久しぶりの再会で積もる話をした。

「そうなの、そんなことがあったのね」

 ミレーから聞くグレーン男爵家の様子は、あまり喜ばしいものではなかった。ソフィアが家を出た後、男爵である父は深酒が増え領地経営もままならなくなる。兄が留学先から帰って来たものの、慣れない経営にてこずっているのか、怪しげな投資話に手を出して今や男爵家の経済状況は破産寸前にまできているようだった。

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