結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
「ミリー、絶対にお父様には伝えないで。この夏が終われば、私は秋からまた夜会中心の生活になって、そして面白くもない貴族の男性と結婚するのよ。もう、お父さまのことだから相手を見繕っているかもしれないわね」
「でしたらお嬢さま、この話はお断りした方が」
「嫌よ! ミリー、お願い。もう、この夏しかないの。夏が終われば、もう覚悟をするから……、お願い」

 ミリーはソフィアの心情を思い、男爵に伝えることを思いとどまった。娘のように可愛がっているソフィアの懸命なお願いに、口をつむぐことにした。絵描きであるアルベルトの詳細を伝えなければ、単に絵師に肖像画を描いてもらうだけで、そのこと自体には何ら問題はない。

 ミリーは後に、この時のことを悔やんでしまう。だが、すでに誰にも止められない恋情をソフィアは抱いていた。




 翌日、油絵の道具を持ってやってきたアルベルトは、一階にあるパティオ(中庭)を眺める部屋に画材をセッティングした。肖像画を描いてもらうのは久しぶりで、ソフィアは少し緊張してしまい顔が強張ってしまう。

 アルベルトはソフィアと向き合うと、どうしたものか、という顔をして腕を組んだ。
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