結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
「ソフィア、今日は少し早めに終わらせて海岸を歩かないか? 今の季節は夕日が海に落ちるのが綺麗に見えるって聞いたんだ」
「夕日を見に行くの? いいわよ」

 レース編みの手を休めたソフィアは、何気なく返事をする。そういえば、以前はよく兄に連れられて海岸で遊んでいた。けれど、日が落ちる前に帰るように言われていたから、夕日が海に沈む景色を見たのは数えるほどしかない。

「私も夕日を見るのは久しぶりだから、楽しみだわ」
「じゃ、片付けるから少し待っていて」

 絵筆を洗う作業に入ったアルベルトは、いつもより素早く道具を片付けた。

 出かけるとあって水色のロングスカートに白いブラウスを着たソフィアは、白くつばの広い帽子を頭に乗せた。あれから母の形見の帽子は使わないようにしている。今日の帽子は、あの後にアルベルトが用意してくれたものだった。

「ふふっ、あなたのくれた帽子まで飛ばしちゃったら、どうしよう」
「そしたらまた、僕が海に入って取りに行くよ」
「そんな危ないこと、しちゃダメだよ」
「ソフィアの為なら、僕は何でもできそうだけどな」

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