結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ～裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ～

「面白いわ、見ているのと中に入るのとでは、こんなにも違うのね」

　心から弾けるように笑うソフィアを見て、アルベルトは腕を組むと満足そうに口角を上げた。

「ソフィア、濡れるといけないからそろそろ上がろうか」
「ええ、そうするわ。まさか、波につけて足を濡らしたなんて、家庭教師が知ったら腰を抜かしてしまうわね」
「きっと、もう立てなくなってしまうからナイショにしておこう」
「ふふ、その方がいいわ」

　脱いでいた靴のところまで戻ると、アルベルトはハンカチを取り出した。そしてしゃがみ込むとソフィアの足を拭きはじめる。

「そこまでしなくても大丈夫よ」
「サンダルの中に砂が入ってしまうと痛いからね。はい、もうできた」
「ありがとう、アル」

　何もかもが初めてで新鮮だった。アルベルトが連れて行ってくれる世界は、どこも色鮮やかで美しい。これまで壁を感じていたことを、いとも簡単に乗り越えさせてくれる。

たとえ身分が違っても、アルベルトと一緒であれば簡単に乗り越えられそうな気がして——彼を見つめようとソフィアは顔を持ち上げると、夕日を背にしたアルベルトはいつになく真剣な目をしていた。