結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 細かな編み目を拾いながら、かぎ針で編んでいく。ソフィアは細く繊細な糸が形をつくり、白く大きな模様を描くのが好きだった。本当であれば、この地方でしかとれないナード草の繊維からつくる糸を使いたいが、ナード糸は入手するのが難しい。

「ずいぶん進んだみたいだね」
「アル、えぇ。あなたが集中して描いているから、私もだいぶ進んだわ」
「みせてくれる?」
「いいわよ」

 ロッキングチェアに近づいたアルベルトは、ソフィアの手元を覗き込んだ。そして、チラっと部屋の隅にいるミリーを見ると、どうやらうたた寝をしているようだ。

「ソフィア」

 甘い吐息とともに囁きながらソフィアの顔を覗き込むアルベルトは、熱を含んだ瞳をしている。この瞳をする時は、決まって甘い一時になる。

 ソフィアは返事をする代わりに、瞼を閉じた。

 するとゆっくりと顔を落としたアルベルトの唇が、額に落ちる。そのまま頬を掠めたあと、ソフィアの唇に重なる。二度、三度と角度を変えて落とされる熱い唇に、思わずこころが震えてしまう。

 名残惜しそうに最後に強く押しあてられた唇が離れていった。

「アル……」
「しっ!」

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