結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 中指を一本たてて口にあてる。音をたてるとミリーが起きてしまうかもしれない。静かに見つめ合うと、アルベルトはソフィアの耳元でそっと囁いた。

「好きだよ、ソフィア」

 ドクン、と心臓が跳ね上がる。ハッとアルベルトを見たソフィアは、「私も」と掠れた声で返事をした。

 それからは二人に言葉は必要なかった。ミリーがいるからそれ以上の触れ合いはできないけれど、まるで禁じられた関係を楽しむようにミリーの目がない時を見計らって二人は唇を重ねた。

 時にはたまらないとばかりにアルベルトはソフィアを情欲のこもった目でみるようになり——、次第に舌を絡めあうように深い口づけをするようになった。





 アルベルトの描く肖像画が完成する日も近くなる。ソフィアは早々にストールを完成させると、次に何をしようかと悩み結局ハンカチに刺繍を刺すことにした。

「ソフィア、肖像画は今日で仕上げられると思うよ」
「そうなの、意外とはやかったのね」

 肖像画が完成すれば、もうアルベルトとこうして会うこともなくなってしまう。ソフィアも王都に戻る日が近づいていた。

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