結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 今回もソフィアのことよりも男爵家の体面を優先し、妊婦を気遣う様子もない。何よりも、アルベルトにはもう婚約者がいるという。もしそれが本当であれば、ソフィアを裏切る行為だ。

「あ、あぁ……」

 ずたずたに傷つけられ、さらに現実を突きつけられるとソフィアは手で顔を覆い、胸が張り裂けるほどの悲しみで泣き崩れた。

「いいか、近いうちにもう一度医者を手配する。今ならまだ中絶することもできるかもしれん。だからそのつもりでいろ」
「そんなっ、お父様!」

 父の中絶という言葉に血が引いてサーっと顔が青くなる。ソフィアはそれだけはしたくないと伝えても、父は耳を貸さなかった。赤ちゃんはソフィアに与えられた大切な贈り物なのに、胎児だとしても殺すことはできない。

「ミリー、どうしよう……。アルベルトは迎えに来ると言ってくれたのよ。必ず来ると」
「そうですね、本当に誠実そうな方でしたのに」
「直接彼に会うことはできないかしら、きっと何か事情があるのよ」
「お嬢さま」

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