結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
「そうね、でももう婚約者の方がいるのでしょ?」
「そうみたいね。なんでもここだけの話、もう妊娠されているみたいよ」
「やっぱり! まだご長男が亡くなられて日も浅いのに、結婚するなんておかしいと思ったのよ」

 ソフィアはアルベルトの噂話を思わず耳にしてしまう。金髪の女性が婚約者なのだろうか、よく見ると女性はお腹に手を当てて嬉しそうに微笑んでいる。そして、隣に立つ女性を見るアルベルトの眼差しはとても柔らかい。

(嘘、嘘よ! アルベルト、嘘だと言って!)

 足を止めると、ソフィアはその場から動けなくなってしまう。本当に、噂通り婚約者は彼の子を妊娠しているのだろうか。こころに疑念が走り始め、ソフィアは体中の血が引いていくようで立ちすくんだ。

 顔を青くしたソフィアをアルベルトの隣にいた女性が見つけ、心配そうに声をかけた。

「あらあなた、顔色が悪いようですわ。大丈夫ですか?」

 ふわりと薔薇の香りが鼻につく。

「私、ローズ・エルトワと申しますの。もし気分が悪いようでしたら、人をお呼びしましょうか?」
「エルトワ……、様?」

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