結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
(そんな、私……! 彼に騙されていたの?)

『男は一度女を手に入れたら満足して捨てることがある』と聞いたことがある。それが自分の身に起こると思いもしなかった。けれど今、自分の目の前でされた会話はそうだと物語っている。

(身分差があるって思っていたけど、本当の身分は私の方が下だったのね。だから……、遊ばれちゃったのね)

 大富豪の侯爵子息と田舎の領主の男爵令嬢、その家格の違いは誰にも明らかだ。

(バカね、私。あんな男をずっと待っていたなんて……、滑稽よね)

 気がつくとソフィアは高いヒール靴を脱いで放り投げていた。足が傷つこうが構わず歩き、グレーン邸に戻る。ドレスを破るように脱ぎコルセットの紐を小刀で切る。もう、二度と着ることのないものだ。

 自分の部屋にある荷物を鞄に入れ、当面の生活費の足しになるように宝石のついたアクセサリーを手に取った。首にかけてある指輪のついたネックレスを引きちぎろうとするが、首に痛みが走るだけだった。

(どうして、どうして取れないの……! もう、忘れなきゃいけないのに!)

 その時、ソフィアのお腹が張るようにグッと痛む。

「うっ」

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