結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ～裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ～

街のはずれにある雑貨屋は、まだ夫が存命中の頃に始めた思い出深い店なので、どれだけ採算がとれなくても潰す気はないと言っている。ソフィアは今そこに甘えているが、いつか雑貨店を大きくしてエルーサには恩を返したいと思っている。

　定休日の今日は朝から店の掃除を終えると、今のうちにレース編みのためのナード糸を仕入れておこうとソフィアは急いで店を出た。

　ソフィアは産んだ男の子をリヒトと名付けた。もう五歳になったリヒトは、毎日元気に近所の子達と遊んでいる。五歳にしては身体が小さめだけど元気いっぱいだ。ソフィアが遊び相手では、もう満足できないほど外を駆けまわっている。

「本当はパパがいるといいんだけどね……」

　そう言いながらも、自分一人でも愛情いっぱいに育てようと思っている。抜けるように青い空を見上げながら、ソフィアは白い帽子をキュッと被り飛ばさないように気をつけながら海岸線を歩いていく。

　ここを歩くと、今でもカーブを超えた先にアルベルトが立っているような気がして見つめてしまう。けれど、紺碧の色は海にしかない。

　きっと今頃はローズと、彼女の産んだ子どもと一緒に家庭を築いているだろう。あなたのもう一人の子どもがここにいるよ、と意地悪に教えたくなるけれど、そんなことをしても誰も幸せになんてなれない。