結ばれないはずが、一途な彼に愛を貫かれました ~裏切りと再会のシークレット・ベビー・ラブ~
 むしろ、そんなことをしたらリヒトを奪われかねない。次期当主の血をひくリヒトであれば、後継ぎのスペアとして引き取られてしまう可能性もある。一夜の遊び相手として捨てたソフィアのことなんてもう覚えてもいないだろうけど、リヒトはまさしく彼の子だ。

 でも、正妻の子ではない男子という立場にリヒトを置きたくない。貴族社会のしがらみの中にいるよりは、貧しくとも平民として自由に生きて欲しい。

「問題は、リヒトがそっくりだってことよね。一目でわかっちゃう」

 息子のリヒトは父親であるアルベルトと同じセルリアンブルーの髪に、深海を思わせる紺碧の瞳をしている。顔つきも似ているので、隣に並べば誰が見てもそっくりな親子だろう。

 せめて髪の色だけでもソフィアと同じであれば、これほど似ることもなかっただろう。でも今さらそんなことを言っても仕方がない。

 以前はアルベルトを思い出すと、怒りに似た感情が沸き起こったものだった。自分を捨てて、ローズを選んだことが悔しかった。けれど、リヒトを産んだ後はそんなことを思い出す暇もなかった。そんな暗い感情に支配されているよりも、もっと前を向いて生きていこうと決めた。そうしないと、生きていけなかった。

< 66 / 231 >

この作品をシェア

pagetop